コミュニケーションデザインに関する
さまざまなアイデアのご馳走。
キャサリン・マッコイ Katherine McCoy グラフィックデザイナー / アメリカ
会議のテーマ「VISUALOGUE-情報の美 (VISUALOGUE: quality of information)」から、何をイメージされますか?

「Visualogue」は私の最近のデザインテーマと一致します。コミュニケーションデザインは、メッセージ、クライアント、デザイナー、そして受け手の間の対話です。全てのコミュニケーション・デザインは、電子メディアに限らずとも非常にインタラクティブなものです。クライアントのメッセージとデザイナーのグラフィック的な解釈は、受け取る側の人々がそのメッセージをきちんと解釈し、理解し、反応できるよう、受け手とうまく作用しなけれなりません。コミュニケーションとは、視覚と口頭による対話であり、メッセージの意味をめぐる話し合いです。

あなたの活動における最近のテーマ、あるいは最近のあなたの中にある「問い」は何ですか?

20世紀、デザイナーはクライアントに効果的に仕え、表現力豊かなグラフィックフォームにメッセージを置き換えるための方法を開発してきました。今、私たちはメッセージを受け取る側の人々についてもっと学ばなければなりません。グローバル社会は多様性に富んでいますから、デザイナーは、「ある普遍的なデザイン原則が全てに適用する」といったバウハウス的な理想主義であれ、デザイナー自身の個人的な表現であれ、一つの言語で表現するのではなく、多様なグラフィック言語を用いて "話す" 準備をすべきなのです。私は、どうしたらデザイナーが受け手の言語、文化的価値、必要性、好みにぴったりのメッセージで、適切に語りかけるメッセージをデザインできるかということを探求しています。私はこれを、文化を持続させることのできる受け手中心のデザインとみなしています。つまり、受け手が属する国や地域、またサブカルチャーなどの様々なコミュニケーションスタイルの尊重です。

今回の会議に対し、どのような期待をお持ちですか?または、どのような成果がもたらされることを期待しますか?

新しい方法、戦略、理論、コミュニケーションデザインの形態を話し合うこの国際会議が、参加者に刺激を与え、豊かな気持ちでそれぞれのデザイン活動や大学に戻れるような、様々なアイデアのご馳走となることを望みます。

会議に参加するデザインを学ぶ学生や若いデザイナーへのメッセージ

コミュニケーションデザインは、建築、医学、法律といった職業と比べ比較的新しい分野です。誕生から100年もたっていないため、私たちの業界はまだ若く、成長過程にあります。電子媒体やインタラクティヴィティの出現によってますます成長を続けています。ですから若いデザイナーには新しい土壌を開拓し、活躍し、新しい考え、方法、形態といったものでデザイン業界に貢献するという大きなチャンスがあります。私は、全てのデザイナーが自分の仕事は貢献することだと考えてほしいと思います―私たちの仕事は業界自体を成長させ、成熟させる贈り物であり、またデザインを受け取る側への贈り物なのです。

クライアントに対し、これまでどのようなパートナーシップをとられてきました か?また/あるいは、今後どのような関係を築きたいとお考えですか?

クライアントとの仕事とは対話であり、共同作業であり、お互いに影響しあう相互作用であると考えたいですね。賢明なクライアントはデザイナーに新しく学ぶ経験を与えますし、またデザイナーからも学ぶものだいうことを理解しています。

地域/文化的衝突、世界的な不況など課題の多い現代社会に対し、デザイナーはどのように貢献できるとお考えですか?

モダニストのデザイン表現、ヨーロッパ中心の消費文化などのように世界を一つの文化に見せかけようとするのでなく、文化の多様性を尊重する方法や戦略を探さなければならないと思います。また、私たちデザイナーは意味を決定づけてはなりません。むしろ潜在的な意味を提供することで、受け手がメッセージを能動的、また批判的に考えながら自身の文脈で個々に解釈できるよう促すべきです。

これからの社会におけるデザイナーという職能の意義と可能性をどのようにお考えですか? 私たちはコミュニケーション革命の最中に生きています。誰もが常にチャンネルを拡大しながら熱心にコミュニケーションをしています。それぞれのコミュニケーションチャネルに適したグラフィックスにメッセージを置き換えていくため、コミュニケーションデザイナーはかつてないほどに必要とされています。インタラクティヴィティは、急速に増加するコミュニケーションに欠かせない要素となってきています。情報が入り乱れる世界に秩序と共鳴をもたらすため、グラフィックデザイナーの技術はますます重要となるでしょう。