ゆっくり働け。仕事を減らせ。よりよいデザインを。
ステファン・サグマイスター Stefan Sagmeister グラフィックデザイナー / アメリカ
会議のテーマ「VISUALOGUE-情報の美 (VISUALOGUE: quality of information)」から、何をイメージされますか?

今日受け取った45通のEメールが頭に浮かびます。もしメールの送信方法がもっと難しければ、そのうち43通を受け取ることはなかったでしょう。それらの情報のクオリティは、コメントのしようがないほど最低でした。量ではなく質に集中することは、デザイナーとしての私たちの仕事をより満足のあるものにするだけでなく、観客からも歓迎される変化なのではないでしょうか。

あなたの活動における最近のテーマ、あるいは最近のあなたの中にある「問い」は何ですか?

最近というわけでなくしばらく考えているのは「グラフィックデザインで人を感動させられるか?」という問いです。非常に難しいとは承知しています。 私がグラフィックデザイナーとして、確実に誰かの心を動かしたと言える唯一の出来事は、私の友人レイニがウィーンからNYに来て、NYの洗練された女性たちは誰も自分に話しかけてはくれないと心配し一人ぼっちになってしまった時のこと。彼の写真とキャッチコピー「Dear girls, please be nice to Reini (女性のみなさん、レイニに優しく) 」を印刷したポスターを、ロウアーイーストサイドのあらゆる場所に貼り出しました。彼は感動していました。そして、彼女ができました。

今回の会議に対し、どのような期待をお持ちですか?または、どのような成果がもたらされることを期待しますか?

すてきな人々に出会うこと。それに尽きます。

会議に参加するデザインを学ぶ学生や若いデザイナーへのメッセージ

デザインを愛しているならデザイナーになりなさい。もし、芸術家になりたいけれどデザインの方がお金になるからと思っているなら、デザイナーになるのはやめなさい。うまくいきません。その方が「賢い」というだけでこの世界に入る人より、デザインを愛する人の方が常により良い作品を生み出します。

クライアントに対し、これまでどのようなパートナーシップをとられてきました か?また/あるいは、今後どのような関係を築きたいとお考えですか?

私はこれまで音楽業界のために多くのデザインをしてきましたし、大好きでしたが、人生における多くの事柄と同様、これらの仕事を当然と捉えるようになり、同じような問題をくぐり抜けることに少し飽き始めてしまいました。そこで「社会的な」デザインに着手することにしました。もちろん私が興味を持ち、サポートしたいと思うものだけです。通常の企業デザインの仕事もします。よいエクササイズになりますし、収入になります。

地域/文化的衝突、世界的な不況など課題の多い現代社会に対し、デザイナーはどのように貢献できるとお考えですか?

経験豊かなデザイナーの方々にアドバイスができるほどのデザイナーではありません。自分自身に言い聞かせているのは、「ゆっくり働け。仕事を減らせ。よりよいデザインを。」

これからの社会におけるデザイナーという職能の意義と可能性をどのようにお考えですか?

プロのデザイナーとして私たちが行う仕事の90%は売ること、または販促することです。売ることに反対はしませんが (実家は洋服小売業ですから) 、デザインには、もっと多くのことができると思っています。デザインは情報を伝え、喜ばせ、楽しませ、支え、そして誰かの人生をシンプルにすることができるのです。将来的にはそのような面に力を注ぎたいと思っています。

本会議において、どんなメッセージを伝えたいとお考えですか?

グラフィックデザインは人の心に触れられるか、という疑問について話します。日常、映画や本は人を感動させることができるようですが、それに比べ、デザインが心の琴線に触れることは珍しいように思います。

本会議に先立ち、Icogradaによるデザイン教育者のための国際的なフォーラムが併催されます。デザイン教育に対するあなたの考えをお教えください。 私は美術学校が大好きでした。可能なら、働かずにどこかの大学院に通いたいくらいです。アメリカでは現在、学校や卒業生が多すぎて、優秀な学生でも就職するのが難しい状況です。多くの学校にとっては難しいかもしれませんが、少数精鋭の学生を育てることがゴールなのではないでしょうか。